空に歌えば――平和・人権・環境(2)

非核平和運動の中で――よろずピースBAND


平和へ続く道を 今日も歩きましょう
黄昏 赤い夕陽 西に沈む頃
言葉を風にのせて 届けよこの思い
  もういやだ戦争の道具
  基地も空母もいらない

平和へ続く道を 今日も歩きましょう
日暮れの鐘の音が 消えてゆかぬうちに
知恵を持ちよって 力合わせましょう
もういやだ戦争の道具
基地も空母もいらない








 よろずピースBANDは、米軍基地と自衛隊基地のある横須賀の非核平和運動の中から生まれたバンドである。
 毎月最終日曜日午後四時に「非核市民宣言運動・ヨコスカ」の月例デモが行われてきた。横須賀ヴェルニー公園(臨海公園)から出発するデモは、よろずピースBANDの「平和へ続く道を」(原曲「リンゴの木の下で」のメロディ)の歌声とともに始まる。自衛隊と米海軍ゲート前を通って反戦の呼びかけをした上で、横須賀中央駅前をこえて歩く。横断幕やプラカードを掲げたデモ隊とともに、アンプを乗せたリヤカーを押してもらいながら楽器を演奏し、歌い続けるバンドがいる。
 よろずピースBANDの結成時期は定かではない。それまでもギターを持ってきて一人で歌ったりテーマ曲をテープで流したりと、月例デモに音楽は欠かせぬものだったが、現在のような形で生演奏で歩くようになったのは二〇年ほど前からだという。そのころ始まったピース・フェスティバルでの演奏もあって徐々にバンドの形になっていった。非核憲法のパラオ共和国の「うなぎの歌」を相馬正男がトマホーク反対の歌にした「トマ喰いうなぎ」。その歌の新宿ロフトでのライブテープを手に入れた堀内大介はウクレレを手にヨコスカのデモで「うなぎうなーぎおれたちゃうなぎ・・・」と歌っていた。それが縁で二人は顔をあわせたという。菅沼みどりは自らの思いを「その日その日が精一杯で歩き続けるのは大変だけど・・・・時代を踏ん張って歩こう」と歌った。曲にしたのは、バンドの名付け親の小園弥生。それらに松戸志朗のサックスがからんで、曲が一つ二つと増えていった。
 非核・基地撤去を願う「核も基地も撤去しよう!」「空母はいらないこの町に」、反原発の「禁断のリサイクル」「GNFの歌」、横須賀を描いた「私のヨコスカ」「横須賀あなたのいる町」などを、デモや集会やピース・フェスティバルで歌ってきた。
最近では堀内はベースに回り、ボーカルに中川茂が入り、またバンジョーを持って独自な歌も作る村松俊秀が復帰、パーカッションに鈴木千尋、さらにエレキギターに服部夏樹と、かなりパワーアップした陣容になっている。デモ参加者の飛び入りも少なくない。

小さなボートが大きな軍艦にいどむ
 波けたてながら 漂いながら進む
 モア号 エスペランサ
 ステファン ジャスティス
 そして 次はあなた

 原潜をとめろ 戦争に行くな
 空母の母港をとめろ
 手をつなぎ 船つなぐ
 船を出そう 船を出そうよ
 われらの旗 海原にかかげ
 船を出そう 船を出そうよ
 われらの怒り 追い風にして

 「船を出そう」(別名「平和船団の歌」)である。ヨコスカ平和船団は、海を軍隊から取り戻し「命の海」を創りだすために、非暴力の抗議行動として米海軍基地へと船を乗り入れる。定例海上行動と海からの基地見学である。米軍は日本政府や横須賀市にも知らせずに勝手に新たな基地機能を追加したり拡充したりするので、海上からの監視が不可欠となっている。事故を隠蔽させないためにも監視が続く。
 いま横須賀では「二〇〇八年問題」が迫っている。米軍の新しい原子力空母の来港について、市長が公約を翻して受け入れ表明してしまった。そこで、市民は住民投票請求に乗り出し、二〇〇六年一一月から一二月にかけて、住民投票条例制定要求に必要な法定数の六倍もの署名を集めた。署名運動の中で歌われたのが「エライ空母がやって来る」(原曲「フニクリ・フニクラ」のメロディ)だ。

エライ空母がやって来る (二年後 二年後)
 載せるジェット機八〇機 (うるさい うるさい)
 うごく巨大な要塞だ (強いゾ 強いゾ)
 排水量は一〇万トン (重いゾ 重いゾ)
 来るゾ 来るゾ 来るゾ 空母
 来るゾ 来るゾ 来るゾ 空母
 あなたに (私に) あなたに (私に)
 みんなに来るゾ 来るゾ空母

 以前は「二年後」だったが、いまは「来年」と歌う。よろずピースBANDの歌は、情勢の変化とともに歌詞を変えていくことも少なくない。最初は「エライ空母がやって来る」だった曲名が、住民投票請求運動が始まると「住民投票で決めよう」になった。
 「自治体の平和力」で戦争をとめ、基地を撤去していく運動の中から、運動そのものとしての「歌う平和力」が立ち上がり、希望の歌を紡ぎ、繋いでいる。

 


非核市民宣言ヨコスカ
ヨコスカ平和船団


無防備宣言

いまこそ守るとき 戦争放棄
ぼくらの町からも 無防備宣言
戦争は 準備すれば やってくる
相手だって 狙われれば 身構える

壁が崩れ 憎しみが消える
まだくすぶる 火もあるけど
東と西 南と北も
わだかまり抑えて 手を取り合い

ジュネーブ条約 守ろうよ 本気になって
小さな町からこそ 国じゅうに
大きな国もみんな 世界中
戦争は 始めさせない 事が大事さ

子ども達の 未来のために
戦争の不安の ない仕組みを
これまで誰も どこでもなかった
だからこそ僕らが 始めるのさ

いまこそ武器を捨て 平和宣言
本当は 誰でもが 願っている
世界は 戦争に 飽きている
無防備こそ これからの 流れだ

いまこそ守るとき 憲法9条
ぼくらの町からも 無防備宣言
戦争に加担しない 町作り
無防備なんて 無謀だなんて 言わないで


マスコミ市民2007年2月