空に歌えば――平和・人権・環境(6)

(今回のタイトル)
平和な地球に守られて
       シャイポール久保田   


荒れ狂う波と 打ち付ける強い雨
立ち向かうその背中に 一筋の光
今 立ち上がるのは 己以外にないと
男は心の 激鉄をおこす
古き錆びた時代に 鉄のクサビ打ち込み
敵も味方もない 目覚めよ 一つになるんだ
見開く眼差しは 遥か海をも超えて
鉄の鎖などいつかは切れる
いつか陽の届かぬ しがらみの闇に
希望の光を注ぎ込め
Flash on light 夜明けに向かって
Flash on light さあ突き進もう
Flash on light 今だ燃え上がれ
次代の扉をたたけ

 Shypaul.K (シャイポール久保田)は、苫小牧を拠点とするミュージシャンだ。
坂本龍馬ファンである。二〇〇二年、苫小牧市内の龍馬ファンクラブ「勇払龍馬会」より作曲の依頼を受けて、龍馬の血気盛んな時期を描いた「RISE(ライズ)」をつくった。翌年、高知県で開かれた龍馬ファンの集いに参加して歌った。
「RISE」は、龍馬が暗殺される前の五年間ほどをイメージして「希望の光を注ぎこめ。次代の扉をたたけ」と歌う。久保田はこう語る。
「日本の向かうべき方向を見つけた龍馬は、列島を西へ東へ駆けめぐり、数々の雄志に会い、語り、惹きつけていきました。紛争による革命ではなく、血を流すことなく時代を切り拓くために命をかけたのです。時代を超えたヒーローとして現在でも多くの人々が龍馬の生き様に感銘を受けています。暗く不透明な現在の日本社会だからこそ、龍馬を語り、歌う意味があると思います。」
 久保田は、中学生の頃、井上陽水の「たいくつ」にはまり、ギターでフォークを歌い始め、GARO、かぐや姫にのめり込んだ。大学時代は、札幌テレビ(STV)のミュージシャンのオーディションやカラオケ大会に出場していた。一九八六年、仲間とバンドを組み、米米クラブ、チューブ、山下達郎などポップスも歌うようになった。バンド名は当初「アクエリアス」、後に「カリプソ・アミーゴ・ロドリゲス・パンチョス」という名前であった。
 一九九〇年、喉に異物がある感じがして声もかすれるようになり、二年程音楽活動を休止したが、九二年、仲間とギターとボーカルというシンプルなユニットを組み、オリジナルにも取り組み始めた。二年後、シャイポール久保田と名乗ってソロでフォークの弾き語りを始めた。
 二〇〇四年、岩見沢市でのフォークジャンボリーで、南こうせつ、伊勢正三らのステージの前座を務め、翌年には、山口県光市のライブ喫茶「ウッドペッカー」で行われたネネ(じゅん&ネネ)とのジョイントライブに参加した。
 二〇〇六年、苫小牧市内のイベントに多数参加したが、北広島市の道立児童自立支援施設の慰問は毎年続け四年目になる。
また市民グループ「ぴーすぷろじぇくと苫小牧(代表:石塚茂子、片平とし子)」より平和の唄の作曲を依頼され「碧に抱かれて」を発表した。この曲は同ぷろじぇくと出版の文集『未来に希望の種を』に添付されたCD「Peace Freaks 二〇〇五」に地元ミュージシャン五名の曲ととともに収録されている。『未来に希望の種を』は「戦後六〇周年記念誌」として出版された。「第一章 語り継ぐ戦争」には二四人の戦争体験が収録されている。「第二章 希望の種」には市内で開催された講演会や学習会の記録を紹介している。「第三章 小学生・中学生・高校生の取り組み」「第四章 共に生きる」「第五章 文芸作品(俳句、詩)」と続く。
 「碧に抱かれて」について、久保田は語る。
 「やすらぎや愛を求めて、洗脳された正義感だけで争いを起こしても、環境には害を与え、愛する人や大切な物を失う結果にしかなっていません。しかも、自分も相手も・・・。醜い戦争を世の中から排除し、自分さえよければいいという感情を捨て、許し合う深い心を持って、一人ひとりが地球人として、国境を越えて手を結ばなくてはいけない時代になっているのではないでしょうか?」
 環境保護を訴える歌であるが、実は人間こそが環境に保護されているのだと強調する。
 「地球に優しく、エコ、緑、大気を守ろうなどと叫ばれますが、緑や大気などに守られているのは我々なんだということをテーマにしました。緑、大気、地球を守ることは、平和な地球を維持することです。いつまでも過去にとらわれ争い続けるのではなく、未来を見据え、許し合う心を持って人間同士接し合わなければいけないのではないでしょうか? もしかしたらこの全宇宙に、高度な頭脳の生命体は地球にしか存在しないのかもしれませんから・・・」
  
 今あなたの腕で 拓かれたこの道に
  憂いぬぐわれて 人々は暮らす
  生命をも燃やして 標なき道を
  ひたすら駆けめぐり 今ここに眠る
  消えゆく灯に 皆何を馳せる
  歴史の波間に 散ってゆくのか
    あなたが示す轍に 夢を育み
    明日の希望に 光をそそぐ
    疲れた躯休めて やすらぎ眠れ
    私の胸に 静かに眠れ

 龍馬暗殺後の妻・お龍の気持ちを歌った「涙想(RUISOU)」は、冒頭の「RISE」と呼応して対になる曲で、人々が生きる望みを与えてくれた龍馬への感謝の念と、自立した人間の「明日への希望」を歌う。「歌詞の聞き取れないような歌は好きではない」と語る久保田の歌は、たしかなメッセージを届けてくれる。

Webサイト

シャイポール久保田の歌は下記のサイトで聞ける

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碧に抱かれて(Ao ni Idakarete)

   
安らぎを求めて 争い合っても
父を待つこの子らからは 涙は消えない
愛を求めて 手に入れた孤独
紅く染まった街に 安らぎなどない
   
手を結び明日へ 希望の和を
 隔て乗り越えて 守れ明日の 碧い空

許し合う心が 胸にあふれたら
この地球(ほし)は どんなにか 安らぐのだろう
わずかひとときの 人の命の灯を
共に灯す喜び かけがえない時
   
夢を持ち明日へ 希望の和を
 隔て乗り越えて 残せ明日の碧い海

大空に 響き渡る
子供の声で 愛をつなごう

 手を結び明日へ 希望の和を
 隔て乗り越えて 目指せ明日の碧い地球(ほし)


マスコミ市民2007年6月